「高校時代、嬉しいことも楽しいことも、辛いことも悲しいことも、一緒に乗り越えてきたから、今の私たちがあるんだよね」


「ああ」


修斗は私に向かって優しく微笑むと、ギュッと私の手を握る。


「ありがと、里穂。俺、お前がいたからサッカー頑張れた」


「そんな、私はなにも。ごはん作って、修斗の帰りを待ってただけだから」


改めてそう言われると、なんだがこっちまで照れてしまう。


「それにも感謝してる。里穂が俺の体のことを考えて食事を作ってくれたから、長い間現役でいれた。でも、それだけじゃない」


「それだけじゃない?」


「試合中、どうしても苦しいときがあった。もう走れないって思ったこともあった。でもそんなとき、自然と里穂の顔が浮かんでくるんだ。きっとこの試合に勝ったら、里穂は笑ってくれるんだろうなとか。点を決めたら、里穂は喜んでくれるんだろうなとか」


「修斗……」


修斗がそっと、両手で私の頬を包む。


「里穂の存在そのものが、俺の力になってた。里穂がいたからこそ、俺のサッカー人生は輝いた。だから、ありがとう、里穂」


「修斗」


修斗の言葉に思わず泣きそうになるけど、私もそっと修斗の手に自分の手を重ねる。


「私こそ、修斗に感謝してるんだよ」