君の隣~サッカーボールを追いかけて~特別編

「そっか」


私たちが高校時代にお世話になった田中先生は、いろいろな県立高校を回ったあと、ここ10年は南高校に勤務してサッカー部を見ている。


田中先生の指導力と、選手の努力もあって、今も南高校は県内屈指のサッカー強豪校として名をはせている。


「やっぱり懐かしいね、修斗」


「ああ」


もう夕方近かったからか生徒の姿はなく、グラウンドはトンボをかけたあとなのか綺麗に整っていて、危なくない隅にサッカーゴールが片づけられていた。


「ねえ、なんでここに来たの?」


「いや、里穂に感謝の言葉を言うならここかなって思って」


「感謝の言葉って……。昨日、スタジアムで言ってくれたじゃん」


「まあ、そうなんだけど。でもやっぱり、顔見て直接言った方が……」


そう言って真っ赤になった顔を私からそむけた修斗は、「んんっ」と軽く咳ばらいをする。


そしてゆっくりと、私の方に向き直った。


「なあ、里穂。俺たち、ずっと一緒にいたけど、ここから、このグラウンドから俺たちの関係が始まったよな」


「うん。そうだね」


小さいころから一緒に過ごしてきたけど、きっと高校時代を一緒に過ごさなければ、私たちの関係はただの幼なじみで終わっていた気がする。