花束を受け取った修斗が、マイクの前に立つ。


そしてゆっくりと話し出した。


「え～まずは、今日も応援ありがとうございました。皆さんの声援で今日も勝つことが出来ました」


そう言って修斗が頭を下げると、スタジアム中から歓声が沸く。


「そして本日の試合をもちまして、私高木修斗は現役を引退することを皆様にご報告させていただきます」


また頭を下げる修斗に、サポーターから修斗コールが起こった。


「高校を卒業しプロサッカー選手となり約20年たちました。まさか自分がこんなに長くサッカー選手を続けられるとは思っていませんでした。これもひとえに、応援してくださるファンの皆さまのおかげだと思っております」


そこで言葉を切る修斗に、また大声援が起きる。


「私のサッカー選手人生は、このFCウイングから始まりました。そしてこのFCウイングでサッカー人生を終えられること、とても幸せに感じています。実は数年前から、自分のプレーに違和感を感じていました。自分が思った通りのパスが出来ない、シュートの精度が落ちた。そのころから、自分の中で引退を考えていました」


スタジアム中が、修斗の言葉に耳を傾ける。


「自分の納得いくプレーが出来なくなってきたこと。これが、サッカー選手を引退する理由です。妻に聞かれました。今やめて後悔しない？と。後悔はしません。やり切りました」


そう言った修斗の顔は、涙ひとつない本当に晴れやかな表情をしていた。


「サッカー選手としての人生は幕を閉じます。しかしこれからもサッカーにかかわっていきたいと思っています。将来の夢は、日本代表の監督です。選手としては達成できなかった、ワールドカップ優勝を、監督して成し遂げたいと思います。今後とも、高木修斗を、FCウイングを、そして日本サッカー界をよろしくお願いします」


ファンに向かって深々と頭を下げる修斗に、大きな歓声が上がる。


「そして最後に、これだけは言わせてください」