私たちの前の席の男の子から、そんな声が聞こえてくる。


その声を聞いていると、修斗が褒められてる嬉しさと、そして今日で修斗が選手をやめるということを改めて感じて、なんだか泣きそうな気分になった。


子供たちにバレないように、こぼれそうになる涙をそっと拭う。


そして修斗最後の勇姿を見ようと顔を上げたとき、審判のホイッスルが鳴らされた。


フッと大きく息を吐く修斗を、スタジアム中が見つめる。


みんなに注目される中、修斗が右足を振り抜いた。


修斗が蹴ったボールは、壁になっている選手を超えて綺麗な弧を描いてゴールに向かって飛んでいき、キーパーは一歩も動けずゴールに収まった。


「入った!」


私と子供たちが上げた声と同時に、スタジアム中が歓声に包まれる。


「お母さん!お父さんってほんとすごいね!」


そう言って果穂が、私に抱きついてくる。


「やっぱすげーお父さん!ねっ、お母さん」


私の方を振り向いた凱斗の目は、キラキラと輝いている。


「うん。二人のお父さんは、本当にすごいよ。本当に、最高のお父さんで最高の旦那さん」


大歓声に答える修斗を見つめながら、私は子供たちをぎゅっと抱きしめた。