桜が散り始めた頃。

今日は高校初のクラス替え。


1年の頃と全く違うクラスの雰囲気。


仲の良かったクラスメイト達と離ればなれになったかわりに、

小学校から幼なじみであるメンドクサイのが同じクラスになった。



「おぉ!理雨(リウ)じゃーん!」
「朝からうるさい、和人(カズト)」



俺、榎本 理雨はさっそく花宮 和人に絡まれていた。


教室内はまだクラスに慣れてないのかほとんど人が居らず、廊下に出ている。



「やー、久しぶりの同じクラスだな!」

「中学までほとんど一緒だっただろ」

「高校一発目から離れたじゃねぇかよ」

「それでも昼休みきてただろ、お前」



ありー?そうだったっけ?と、わざとらしい幼なじみに呆れ、窓の外を見る。


ちょうど窓に近い席が割り当てられ、嬉しかった。



散りゆく桜。

青々とした雲ひとつない空。

そんな空をキャンバスとして飛行機雲が線を描いている。




俺は自然と両手で四角をつくり、アングルを構えた。



うん、いい感じ。





「おーい、理雨さん?」


俺の机の前に膝立ちして、手を伸ばす和人にアングルを壊された。

イラッときて和人の太もも辺りを蹴飛ばす。


「痛っ!怒んなよ、写真バカ!」


アングルを壊した和人が悪い。

それに写真バカなのは自覚済みだ。

何か綺麗なものをみると、ついアングルを構えてしまうのだ。



「あ、そうだ。理雨、部活は?」

太ももを擦りながら和人が尋ねる。


「無いけど、お前は?」

「今日は休み。ここんとこ休みなかったしさ」


と、笑う和人はカルタ部。

うちの高校は結構な強豪校で毎年全国へ行くほどの実力をもっている。

その部の内でも強いと評される和人は5本の指に入るほどだ。



「じゃあさ、帰りに図書館行かね?」

「・・・何の企みだ」

「ひでぇ!桜ノ宮学院の近くに綺麗な図書館があるから行こうかなって」



・・・桜ノ宮学院?

あぁ、全国1位のカルタ部がある・・・。



「そこの図書館さ、女王がいるんだって!」

「は?女王?」

「あれ、知らないの?お前。カルタ界の女王、天野 和美(ナゴミ)」


あぁ、そう言えば茜が騒いでたな。


「そういうのは茜を誘え」

「え、茜ちゃん!?受験生でしょ!?」



茜というのは、俺の妹。

中学3年でカルタ部部長を務めていた。
・・・学問はいかがなものかと思うが。


「てか、どこ受けんの。茜ちゃん」

「桜ノ宮」

「・・・推薦?」

「自力で」

「大丈夫なの?」

「多分、無理だな」


茜が桜ノ宮に合格したら、多分、天変地異かなんかだぞ。

ただでさえ難関校と言われてるのに。




「・・・じゃなくて!行く?行かない?」

「・・・行く」



和人曰く、最近出来た図書館だから綺麗なのだと。

雑誌や写真集も置かれており、理雨にはうってつけだろ?と、和人は言った。


「そういうお前はなんで行くんだ?」

「え、女王に会いたいから」

「・・・お前、本当に残念だよな」

「はぁ!?」


ろくに勉強しない和人が図書館へ行くなんて言い出したから何事かと思ったが・・・。

やっぱりそんな理由か。
どうせ女王にあって、色々教えて欲しいと言うんだろうな・・・。


顔は整ってるほうだし、人懐こいためモテる。が。

ヤツの情熱は全てカルタに注がれるためほとんどの女子が諦めたのだ。



お前は俺のこと、写真バカって言うが、
お前も人のこと言えないと思うぞ。


「カルタバカ」

「お前に言われたくないな」