あれは、高校に入学して一週間ほど経った日のことだった。
あたしは、日直の仕事を終えると、
ザーザーという雨の音をBGMに、少し寒い廊下をゆっくりと歩いていた。
日誌と鍵を、初めてはいる職員室に返して昇降口に向かう。
昇降口が近づけば近づくほど、雨の音は強くなり、思わずはぁっとため息をついた。
帰りのHRあたりから降り始めた雨。
朝、テレビは「雨は降らない」って言ってたのに。と、厚い雲に覆われた空を睨みつけた。
当然のことながら、傘なんかもってなくて。
しばらく雨が止むのを待っていたけど止む気配は無かったから
あたしは覚悟を決めて、雨の中へ飛び出そうとした。
その時
誰かに腕を掴まれて、グンッと後に傾く。
2、3歩よろけて後を振り返ると、知らない男の人が立っていた。
ネクタイの色からして…3年生だ。
けど、なんであたしが、見ず知らずの先輩に止められてるのか。
あがり症気味のあたしは、掴まれた腕と先輩の顔を交互に見た後、目を泳がせた。
ちらっと見た先輩の顔は、スゴく整っていた。
栗色より少し明るい茶髪はふわふわしてて、
癖っ毛なのか、毛先が少しクルンとなってて可愛い。
目はパッチリ二重でまつげが濃い…。
が、ただ可愛いだけかと思えば、鼻はスッと筋が通っていて、シャツから覗く鎖骨や喉仏を見ると、エロかっこいいと思えた。
とにかく、とても綺麗な顔立ちだ。
何度も何度もチラチラ盗み見していると、さすがにばれたのか 目が合う。
目をそらそうと思ったが、…出来ない。
なんでだろう。
