「なぁ、見たか?紫炎が暴れてるとこ」

「あれやばいよな。あいつら薬もやってんだろ?」

 そんな声が楽しい祭りの下で囁かれていたことも。

「っう…」

「ッチ、いねぇな」

「めんどくせぇな」

 祭りのすぐそばで、ケンカが起きていたことも。

 夏がそれに気づいていたことも、私は何も気づけなかった。

 そして、まさか本物の暴走族が私たちに迫っていただなんて想像すらしていなかったんだ。

「どこに逃げやがった、夏樹…」

 夏が隠していたことに踏み込まなかった自分を責めることになるなんて、この時の私は、考えもしなかった。