「きよさん、秋を口説くなって言ってるじゃないっすか」

「別に?俺はただ将来の嫁にアプローチしてるだけだし?」

「だから、誰が嫁ですか」

 ニヤッと笑うきよさんに思わずイラッとする。

 きよさんは俺らより4つ上の大学3年。

男から見ても結構かっこいいと思う。

だから、大学で本命の彼女作って来いとひそかに願っていたのに、俺の期待は見事覆された。

 昔から、きよさんに彼女がいない時なんかないと言うほど、きよさんはモテてた。

ただし、長続きはほんとにしない。

でも、それはきよさんが悪いと言うわけではない。

女癖が悪いってことでも絶対にない。

 きよさんは付き合う前に告白してきた人へ必ず言っているらしい。

『自分には将来結婚したいと思ってる人がいる。だから、あなたと付き合うとしてもそれは学生の遊びの付き合いと変わらない。俺は本気には絶対にならない。それでもいいのか』

 そう、伝えているらしい。

 それでもいいと言った人がきよさんの一時的な彼女になる。

だけど、きよさんは相手に触れることは一切ないし、そういう雰囲気を持ちかけても絶対に応じない。

そればかりか、手をつなぐことさえないらしい。

 だから、相手側から愛想をつかされて別れるのがいつもらしい。

この場合、愛想をつかされると言う表現があってるのかもわからないが…。