「兄ちゃんを雇ってくれてありがとうございます!」
「え、雇う?」
「はい!兄ちゃん言ってました!志季って言う場所にバイト採用してもらえたって、秋奈さんが認めてくれたんですよね!」
「バイト!?」
ど、どういうこと…?
志季がバイトなんてひと言も言った記憶ないんだけど…。
「だから、志季はバイトじゃねぇって…」
「でも、兄ちゃんバイト先って言ってましたよ!お給料もいいところだから大丈夫だって言ってました!」
自信満々で言う弟くんは、春馬の言うことなんか全然聞いてない。
お兄ちゃんのこと、ほんとに大好きなんだ…。
「秋奈さん、志季ってバイトなんですよね?」
無邪気に、尾木くんの言ったことを信じてる弟くん。
だけど、それは嘘。
お給料がいいなんてありえない。そのお金は、多分盗んだものだ。
「秋、嘘つくなよ」
先手を打つように、瞬が耳元で呟く。
分かってるよ。でも、この子を傷つけることになる。
それに躊躇してしまう。
深呼吸して視線を合わせた。