「…瞬、今から出れる?」

「は?つうか、窃盗?」

「なんか、志季のメンバーがやらかしたらしくて」

「…分かった。部長に話してくるから待ってろ」

 すぐに道場に戻っていった瞬を見送って、今から戻るねと伝えて電話が切れる。

 思わず大きなため息をつく。今までこんなこと起きなかったのに…。

 不用意に入りたいって言ってくる人を無条件に入れるのはやっぱりまずいかもしれない。

 面接とか、また方法考えなきゃ…。

 もう一度だけため息をつく。

 志季のトップは私だ。決めるのも、私だから…。

 荷物を持って、制服に着替えてきた瞬が道場から出てくる。

「秋、お前のせいじゃない。責めんな」

「…うん」

 あはは、瞬には本当に敵わないなぁ…。

 深呼吸をして気持ちを切り替える。

 瞬と一緒に20分の道のりをできるだけ急いで自転車で駆け抜けていった。