「……」
「…ぐすっ……うっ」
「……」
「ふぇっ……うぅ~」
……あぁ、放っておけない
チラッと柊雅さんを見ると、目を閉じていたままさっきと同じ体勢だった
……少しだけならいいよね
泣き止まない子供の声に耳を傾け、私はそっとその場を離れた
「うぅ〜、ふぇぇぇん」
段々と声が近くなるにつれ、路地が狭くなっていく
こんな人通りの少ない所でなぜ泣いているの?
「助け……てぇ……うっ」
目の前の角を右に曲がればいるはず!
声の大きさから大体場所を掴んだ私が早足でコンクリートの角を曲がると
「っっ!!!!」
そこはある程度の広さがあるスペースで、奥は行き止まりになっていた
「お、来た来た」
「まさかこんな簡単に釣れるとは」
「若様とやらも大したことねぇーな」
そして、聞こえてくるのは薄汚い声
見えるのは、小さな子供を囲んだガラの悪い集団と見覚えのある金髪
そう、顔と同様に醜い…あの傷んだ金髪頭
「ガキ、もう行っていいぞ」
さっきまで取り囲まれて怯えていた小さな男の子は、開放されたと同時に凄い勢いで走り去って行く
「…仁、感動の再会だな」
そう言ったのは間違えなく
あの日私を路地裏で追い詰めた、暴走族と思われる集団の先頭に立っていた男で
……ハメられた
そう気付いた時には
「はーい。大人しくしような?那夏ちゃん」
私の身体は仁によって拘束されていた
