理玖さんの眉が少し下がり、何かを言いかけた時だった
「邪魔なのよっ!!」
ドンッッ
怒りを含んだ大きな声と共に、私は力強く突き飛ばされる
「蜜ちゃんっ!」
なぜ「邪魔」と言われたのかも、突き飛ばされたのかも容易に想像がつく
思ったよりも強い力で押された私はどんどん前へと進みながら倒れていき
理玖さんが咄嗟に支えようとした手も届かず
「っんぅ」
硬いものに顔から突っ込み、やっと止まった
「「「……………」」」
静まり返る周りの空気
………まさか
恐る恐る顔を上げると、振り返った無表情の柊雅さんが見え
「……」
「……」
漆黒の瞳と数秒交わる
そう、実際は数秒だったかもしれない
でも私には何分、何十分ととても長い時間に感じられた
「ごめんなさい」
そう謝ってすぐに離れようとした
でもその前に柊雅さんの口が開いた
そして、その口から発されたのは
一切予想していなかった言葉で
「……触るな」
ピシッと音が聞こえた
私の心が凍った音が…
「……ご……ごめ……」
泣くな
泣いちゃダメなのに
「ごめん…な……」
こんな事言われても動じたことなんてなかったのに
「……ごめんな…さいっっ……」
どうして涙が止まらないの?
