藍色の瞳





「久しぶりの若様だわ!!」



「いつ見ても素敵っ」



「それにしてもあの女、まだいたのね」



「ふふっ、何か勘違いしてるんじゃない?」






繁華街に行くとなった時から分かっていたこの状況






でも最近あまり来ていなかったからか、久しぶりの憎悪は皮肉さを増しているような気がした






陰口の攻撃と暑い日差しの中、私は意識を保って柊雅さんに付いていくのがやっとだった






「……蜜ちゃん」






後ろからかけられる理玖さんの心配そうな声まで、哀れんで馬鹿にしているかの様に聞こえてくるから私の性格はきっとすごく悪い






ヒソヒソ…ヒソヒソ…ヒソヒソ






今日はいつもより周りの視線と声が気になった






『堂々としろ』という理玖さんの言葉を思い出し前を向こうとするも、自信が持てない






その理由はだいたい想像がついていた






初めてこの2人と繁華街に買い物に来たときに聞いた“あの言葉”






『死ねばいいのに』






冷たい声がぐるぐると頭の中でリピートされる






そして最近の柊雅さんとの関係






同じ部屋で暮らしているのに全く関わりのない私達






きっと怖くなってきたんだと思う






……捨てられるんじゃないかって






「蜜ちゃん、顔色悪いよ?」






「…っ!!

……すみません」






だめだな






悪い事を考えれば考えるほど、どんどん深みにはまっていく






あれも、これもって、全てが悪い様に考えられてしまう






「どこに向かってるんですか?」






……違うことを考えよう






「俺達のオススメのイタリアンのお店だよ。」






「理玖さん達はよく行くんですか?」






「そうだね。小腹が空いたらよくそこに行くよ。」






「楽しみです。」






すこし楽になった気分をそのまま落ち着かせようと、笑顔を作り理玖さんに向けた






「…蜜ちゃん」