最近おかしかった






周りの空気がいつも以上にピリピリしていた






私が普段生活してる柊雅さんのマンション

そこにいる何人かの護衛の人の空気






いつも穏やかな理玖さん






そして普段から重々しい威圧的な空気を纏う柊雅さんは、近づくと気絶してしまうほどにまで殺気が溢れ出ていた






……そして変わった事はそれだけじゃなかった






『行ってくるね、蜜ちゃん』


そう言って2人が家を出る時間は変わらなかったけれど






夜はいつも8時くらいに帰ってきていた柊雅さんは、私が起きている時間には戻らなくなった






ドアを開ける音が響くのは深夜2時以降






柊雅さんが帰ってきたことが分かっても、寝起きの悪い私は起き上がって出迎える事は出来なかった






早朝に帰ってくることも少なくはなく、寝てない日もあるんだと思う






唯一触れてもらえる家の中での時間がすれ違っていき、私と柊雅さんはほとんど他人のようになっていた






「……いや、元から他人か……」






口から零れた言葉に妙に虚しさを感じ、私がここに置いてもらえる時間も限られていると思い込んでいた






過去の傷が癒えない私は人より愛に飢えているようで






例え1週間だけでも、誰かに“温かさ”を貰えた記憶がある限り






その温かさを再び求めずにはいられなかった






決して誰でも言いわけじゃない






柊雅さんの温もりに安心感を持てる自分の気持ちはまだハッキリと分からなかったけど






“特別な人”として認識していることに間違えはなかった