電話を切った後は大変だった
『飛ばせ』という命令を無視して安全運転で向かうわけにもいかず
ウゥーーーー…ウゥーーーー…
文字通り暴走していた俺の車は、パトカーとレースを繰り広げていた
だけど、後ろから追われているせいか俺の負けず嫌いに火がつき
「早いな」
行きは20分かかった道を5分で走り抜けた
ふっと口角を上げた柊雅はどこか楽しそうで、もしかしたら俺がサツに追われていた事を知っているのかもしれないと思えてくる
「新にはloupのメンバーだけ集めるように言ってあるよ」
「ああ。出せ」
柊雅の声が全身にビリビリと響き、俺は大きく頷く
そしてもう一度車を走らせた時にはもう日が沈みかけていた
「なぁ、柊雅」
「……」
返事はないが、サイドミラーで見ると目は開いていたので言葉を続ける
「ありがとうな」
「……」
「俺が朝、あんな事言ったから柊雅は動いてくれたんだろ?」
……俺が『けど、蜜ちゃんの気持ちも考えてあげて?』って言ったから
だから柊雅は今アイツらの所に向かってるんだろ?
「……」
やっぱり窓の外から視線を動かさない
その横顔は
初めて蜜ちゃんがこの車に乗った時の、彼女の悲しみが滲み出た横顔と重なった
車が大きな倉庫の前に静かに止まる
俺がドアを開けに行く前に降りた柊雅は
「面倒な問題を早く片付けたかっただけだ。」
と言った
それは、“偽り”を無くす為だって捉えても良いのかな…?
