藍色の瞳





「今日の夕方、そっちに行くから準備しといて?」






若と別れた後、すぐにアイツに電話をかける






『……柊雅さんが行くって言ったのか?』






「そうだよ?じゃないと俺が行くわけないじゃん」






『だろーな』






笑いと共に聞こえてくる声に、相手に顔が見えていないと分かっていても黒い笑みが漏れてしまう






『どこまで集めればいいんだ?』






でもすぐに真面目な声に変わる






きっと事の重大さに気付いているんだろう






「下っ端は一応全員集めといてね。
傘下の族は呼ばなくていいよ。」






『了解』






「詳しい事はきっとお前ら3人にしか説明しないと思うけどな」






『へぇ』






相変わらず聞いているのか分からない返事にイラッときたので、今日会ったら1発殴ろうと心に決めて電話を切った






その日の俺の仕事は柊雅の補佐ではなく組長の秘書






電話で少し時間を取られたため、本家まで車をいつも以上に飛ばしてしまった






「お疲れ様ね」






「時間ギリギリで申し訳ありません」






そう頭を下げて謝罪すると






「あら、いつもこれぐらいよ?」






といたずらっぽく笑う組長の妻である来菜(rana)さんに






「それは嫌味と捉えてよろしいでしょうか?」






と苦笑気味に返す






すると来菜さんはクスクスと可愛らしく笑った






……いつ見ても、こんな母親を持つ若があんな冷たい男だということが信じられない






「雄也(yuya)さんも待ってるわ」






「承知しております」






頭を上げた俺は広い家の奥へと向かった