お金を取られたからといって、男の方は警察にも友達にも言えるはずもなく
だって自分もやっちゃいけない事しようとしてたんだもの
私を訴えたとしてもまず自分が捕まるのなんて火を見るよりも明らか
私がこんなことをしているなんて被害にあった男以外はだれも知らない
だから私がお金だけ取ってるなんて男達は知るはずもなく寄って来る
分かってる
私はもう引き返せない所まで来てしまった
こっちの世界でも底辺の人間って事ぐらい自覚してる
でも今の私はこの生き方しか知らない
助けてくれる人なんていない
「まだ帰るには早いかな…」
時計の針は午後8時を示していて
「那夏ちゃんだよな?今から俺らと飲まねぇ?」
まだ帰りたくなかった私は
「いいよぉ〜!飲も飲も!」
よく考えもせず、ナンパ男の軽〜いノリに乗ってしまった
「え、マジで⁉︎那夏ちゃん軽〜い
もしかして相手いなかったの?」
軽いのはお前だろと思いながらも
「丁度暇してたんだ〜!誘ってくれてうれしーな。でも、今日は飲むだけで、ね?」
笑顔貼り付け一応念を押す
「あの那夏ちゃんと飲めるだけで嬉しいよ」
“あの”というワードに漏れそうになる自嘲を堪えながら、私は男の腕に自分のそれを絡めた
