◆◆◆◆◆



「1、2、3、…………10…13…」






口から漏れる数字が大きくなるほど私の気分は上がっていく






「さすが社長」






さっきも同じ事を呟いた気もするけど、さすがとしか言いようがない






繁華街を足早に歩きながら諭吉さんの数を数えると、結局20枚にもなった






これで当分ホテル街に行かなくても良いと思いながら、何となく視線を横に向ける






「………」






建物のガラス越しに見えた自分の姿






色素の薄いミルキー色の巻かれた髪は腰まであって






2重の瞳は暗い藍色






もちろんカラコンもしていなければ染めてもない






どちらかと言うと“嫌い”なこの容姿






役に立つ時もあれば、今の私をつくる原因ともなった憎いものでもある






「なぁ、あれ那夏じゃね?」






「うわ、ホントだ‼︎相変わらず可愛いな〜」






「まぁどうせ、これから男んとこ行くんだろーな。
もしかしたら今まで会ってたのかも…」






繁華街を歩いていると、必ず集まる視線と噂






確かに今まで男といたけど、噂してる彼らが想像してる事など一切起きていない






でも私は否定しない






繁華街で男をはべらす“那夏”は噂だけで充分






きっと今頃時田さんは青ざめているだろう






あんなにお腹いっぱいだった財布が、とってもスマートになっているのを見て