でも、それはさっきのように私には無関係なもの
…ではなくて
一気に血の気が引くのが自分でも分かる
背中には冷や汗が伝い、身体は震え
頭の中は(どうしよう、どうしよう…)と初めての事にパニックになる
「俺の前に出てこい那夏ぁ‼︎この辺にいる事は分かってんだ‼︎
……いたぶってやる」
「………っ」
最後の言葉が微かに聞こえた瞬間
私は走り出していた
早く…早く家に帰らないとっ
激しく響いていた怒声に「何事?」と立ち止まり同じ方向に視線を集める通行人を押し分け
私はがむしゃらに走った
スプレーでダークブラウンに色を変えた自分の髪が視界に入り、いつもよりは目立たないと少し安心する
でもそれは私の大きな勘違いで
この場所で“那夏”の姿が目立たないなんてことはありえなかった
