藍色の瞳




流れるクラシック音楽を聴きながら煙をゆっくり吐き出す






そろそろ11時になろうとしていた






「……今日その“若様”がここに来てることは知ってんだよな?」






「女の人が話してるの聞いただけだけどね」






「きっとまだこの近くにいるはずだ。俺らがこの店に入ったぐらいの時間に繁華街に来ただろうからな。」






「そう」






「あの人がここに来るのは“見回り”。つってもあの人自身が見回るわけじゃねーけど」






きっと今新が話しているのは誰でも知っているような情報なんだと思う






でも、何だか新がただ“若様”を知っているだけじゃない気がして






「新は“若様”に関係してたりするの?」






つい聞いてしまった






どこか遠くを見ていた新の視線はチラッと私に向けられ、すぐに遠くへ戻ってしまった






「………さぁ…な」






………知らないなら知らないままで良いということだろう
私もそれ以上はそこに触れなかった







「あの人は簡単に近づける人じゃねーよ。
お前もこの世界じゃかなり有名だけどな、お前なんかが近づいて良い人じゃねー。」






「……ふっ
分かってるし、近づこうなんて思ってないから安心して。」






『お前なんかが』か……