10分後、やっと起き上がってくれた柊雅さんにしっかりと手を握られた状態で寝室を出た私
理玖さんに作ってもらった豪華な朝食を食べた後、ここに連れてこられた時のようにソファに座るよう促された
あの時みたいに、柊雅さんが座っている方とは反対の隅に寄ったりはしない
ちゃんと隣に座ったはずだった
なのに…
「こっち」
「えっ」
ぐいっと力強く腕を引かれ、気づいた時には柊雅さんの股の間に座り後ろから抱きしめられる体勢になっていた
やっぱり密着することに慣れない私が慌てていると、理玖さんが目の前に膝をついて屈む
「大事な話なんだ」
「っ!?」
突然放たれた言葉に目を見開くが、理玖さんの表情は物凄く真剣だった
「っていっても何から話していいか俺には分からない」
あ……今理玖さんは“柊雅さんの右腕”としてではなく…“組長の秘書”でもなく
“1人の人間”として言ってくれている
一人称が変わったことで、私は少し前の理玖さんと柊雅さんの会話を思い出していた
「だからさ、蜜ちゃん
なんでも気になったこと、俺達に聞いてほしい」
「……え?」
「今までのことで気になったことがあれば聞いてほしい。
俺達は全部に答えるから。
もう、隠し事はしないから。
全部終わらせたから。」
…終わらせた…
…何を?
今の理玖さんの言葉だけでも聞きたいことがあるのに
私の全ての疑問をぶつけて大丈夫なの?
本当に、全部こたえてくれるの?
また…
また独りぼっちにしたりしない?
「…っ」
「蜜ちゃん?」
……こんなこと思ってる私だって
私だってまだ柊雅さん達に話していないこといっぱいある
言ってしまったら嫌われてしまうだろう事だってして来た
私がこの人達に色々聞くって事は
私もこの人達に自分のこと、全部話さなきゃいけないんだ
……覚悟…出来てる?
「っ!?」
血が止まってしまうくらいに手を強く握りしめた時、温かく大きな手が優しく頭を撫でる
「お前の事は無理には聞かない
お前が気になったことを聞くだけでいい」
そして頭上から発された低い声は、私を1番安心させてくれる言葉を紡いだ
「…ん」
必死に頷く間もゆっくりと大きな手は後頭部を上下する
この人になら…
この人になら話せる気がする
自分の全てを話せる気がする
もし嫌われたら…
そんなの考えたくもないけれど
「私も…話します」
この人の傍にいる限り、自分を偽りたくないから
「うん。
蜜ちゃんの話も聞くよ。
でも、無理はしないでね」
「はい」
優しく細められた理玖さんの目を強く見つめ返した後、お腹に回された柊雅さんの腕にそっと握った
