長い睫毛がピクッと動いた
「柊雅さん?」
トントンと胸を叩いていた手を広げそっと下ろす
「……蜜?」
形の良い唇から掠れた低い声が漏れると、私の心臓は大きな音をたてはじめる
ゆっくりと瞼が開かれ、長めの前髪から艶やかな漆黒の瞳を覗かせるその男はやっぱり私が望んでいた人
「柊雅さん…」
何回目だろう、名前を呼ぶのは
でも確かめずにはいられない
だって今までずっと、目覚めても広いこのベッドに独りぼっちだったから
また夢を見ていて、目覚めたら貴方は消えてしまうかもしれないと不安でたまらない
そんな私の心が分かっているのかいないのか
大きな温かい手をそっと私の頬に添え、優しい表情で貴方は言う
「……はよ」
「……っ」
だから泣いてしまうんだ
いつもいつも不意打ちだから
不意打ちに“優しさ”や“愛”をくれるから
「あ…さですよ
理玖さん…来ましたよ」
いっぱいいっぱいになった私の口からはそんな言葉しか漏れない
「…蜜」
だけど柊雅さんは起こそうとする私を無視して、また名前を呼ぶ
だからまた私の心臓は大きく波打つ
「…ふっ…んぅ〜」
優しく重ねられた唇
甘やかすように唇の輪郭を舌でなぞられた後、求めるような深いキスに変わる
「あのっ…」
がっちり後頭部を手で支えられ息をつく間も無いキスは、私に何も言わせないらしい
