「………」
上から聞こえてくるのは穏やかな寝息
……だ…だれ?
いや、誰って言ってもこのベッドで寝てる人なんて1人しかいない
けど…この状態は何?
まだ夢の続き?
それなら嬉しいけど、リアルすぎる感覚から夢じゃないことが分かる
……よし
とりあえず出よう
……そう決意したものの
身体を右に捻っても左に捻っても強く揺さぶっても……
がっちり絡まった腕と脚から開放される気配がない
「んん~~!!」
最後の手段で、目の前にあるたくましい胸板を両手で押して身体を仰け反らずも
「……っん!」
さらに強い力で締め付けられてしまった
さて…どうしよう
早くここから抜け出したい
頭ではそう考えているのに
ずっとこの香りに、この体温に包まれていたい
心ではそう願ってる
朝から頭の中で葛藤する私
ピンポーンッ
静かな部屋にチャイム音が響いたのは、誘惑に負けた私が広い背中に腕を回しかけた時だった
……理玖さんだ
長い戦いが終わった
「若、蜜さん」
次第に近づいてくる声
寝室の扉が開く音とともに理玖さんの溜息が聞こえた
「…やっぱりまだ寝てましたか」
