藍色の瞳





ホント、こういう所は人一倍鋭いよな






「俺の入る隙なんてねぇよ」






『……柊雅さん』






そう呟いたアイツの顔を見た瞬間確信した

こいつはどうやっても俺には靡かねぇって






「理玖」






いつもより穏やかな低い声が響いてくる






その声の主の腕には綺麗な顔で無防備に眠る蜜






「どこに向かわれますか?」






「家でいい」






「承知」






淡々と交わされる会話を聞きながら煙草を取り出す






「新も来るか?」






「いや……俺はどこかで飲み直してから帰る」






兄貴の誘いを断り「じゃあ」とその場を離れる






今はこれ以上あの2人の側に居られない






「……どうすっかな」






ふーっと吐き出した煙草の煙が冷たい空気に溶けていく






飲み直すと言ってもトウマの店に戻るつもりはない






寂しいような虚しいようなモヤモヤした気持ちを紛らわせたかった俺は適当に誰か呼ぼうと“女用の携帯”を取り出した





「亜衣…佳奈…そら…智香…………っ!!」






登録された“那夏”の文字をしばらく見つめた後、プライベート用の携帯を取り出し、那夏のメールアドレスと電話番号を書き込む






……これくらい許されるよな






少しだけ満足した俺の携帯には“蜜”の名前が新しく登録されていた