柊雅さんと那夏が車に向かって行った後、俺達もその後を追う
「もう知り合ってたんだ?」
最初に口を開いたのは兄貴だった
「……那夏のこと?」
……違った
“蜜”、だったっけか?
「新、一つ聞いていいか?」
「んだよ」
「この前、BARで電話してた相手は誰?」
………きっと兄貴は答えの予想がついた上で俺に聞いてる
バカな俺でもそれくらい分かった
「アイツだよ」
それがなんか悔しくて、柊雅さんに抱えられている蜜を顎で指しながら素っ気なく答えた
「…ふっ」
そしたら、少し高い位置から鼻で笑う声が聞こえてくる
「好きだったとか?」
だんだんイラついている俺を無視して、ニヤニヤと表情を緩めながら顔を覗き込んでくる面倒な奴
殴ってもいいか?
いいよな?
俺も少し前、倉庫でいきなり理由も分からず殴られたんだし?
ぐっと拳に力を入れたとき
「まあ諦める必要はないんじゃない?」
兄貴が放った言葉は意外なものだった
「相手が柊雅だろうが、自分の好きなもの欲しいものを譲る必要は無いと思うけど?
第一、そんな事柊雅も望んでねーよ」
「………」
珍しいよな。
柊雅さんの命令は絶対で、いつも柊雅さんの事を第一に考える理玖兄がこんな事言うなんて
兄貴の言葉を深く受け止め自分の気持ちと今の状況に向かい合ってみる
……ん?
…………あれ?
「おい…なんで好きって………」
なんで俺が蜜の事好きだって知ってんだ?
「は?
バレバレだろ、電話してるときの表情で」
何?気付かれないとでも思ったの?
とでも言いたげな兄貴の顔に冷たい視線を送る
