30分?1時間?ぐらい経った頃だろうか






もしかしたら実際は5分くらいかもしれない






「…い。
那夏……い…おき…」






「……な…に?」






私は聞き慣れた声で目を覚ました






「お前、またこんな所で寝て…
風邪ひくぞ」






「……」






「…おい」






「あ……」






「…那夏?」






「…新…?」






「他に誰がいんだよ」






相変わらず綺麗な金髪は光に照らされ、数個ついたピアスや控えめなネックレスが彼のチャラさを表している






「……新も…嫌なことあったの?」






意識がぼーっとして焦点が定まっていない私の口からはそんな疑問が漏れていた






「…は?」






隣に腰を下ろした新は煙草に火をつけようとしていた手を止める






「……なんでもない…」






「…おい、お前」






「トウマさん、同じのもう一杯ください」






何故か心配そうな色を見せた新の言葉を遮るように私は注文をした






「……」






「……ふぅー」






静かな店内には、トウマさんがグラスを洗う音と新の煙草を吸う音だけが響いている






このままずっと沈黙だと思ってた






初めてここへ連れてきてもらった日も、新はほとんど喋らなかったから






なのに…






「お前…どこに住んでんの?」






こんな事をいきなり聞いてきたこの男は、何を考えているのか分からない






「…ん~、気になるの?」






だから逆に聞いてみた






今の私は“那夏”だから