「なぁ?そうだよな?」






「…誰と間違えてるか知らないけど、もう行くね?」






「いや、間違えるわけないじゃん。
俺毎日この辺に居るんだぜ?
すぐに那夏ちゃんだって分かったし」






…やっぱりこの人暇人か~






こんな所に毎日来てよく飽きないなぁ






「そうですか。
良かったですね。私とそっくりな人が見られて。」






こういう男は厄介だ






『毎日見てる』とか『いつも君のそばにいるよ』とか…






この辺りの事をよく知っている奴と関わるのは私にとってこの上なく面倒なことだった






「まぁ、しらばっくれられるのも今のうちだけだって。」






「…はぁ」






……そろそろ行ってもいいかな?






ここは人が多すぎる






「行っちゃっていいの?





……彼氏が浮気してるかもしれねぇーのに?」






「……は?」






彼氏?
浮気?






……この人何を言ってるの?






私にはそんな愛をくれる人いないよ?






「まぁまぁ、あそこ見てみなよ」






「?」






訝しげにその男の指さす方を見ると






「……あ…」






大勢の人の隙間から垣間見える柊雅さんと理玖さん






いつぶりだろう






彼の姿を見たのは






だるそうに煙草を咥え壁に寄りかかる姿は久しぶりで






「……」






思わず目を見開いてしまった






意識すると周りからは柊雅さんに向けられた言葉が数多く聞こえてくる






それらは全て彼を敬うもの






「じゃあ…キスしてよ?」






そんな中、凛と響いたのはその言葉だった






……だ……れ?






柊雅さんと理玖さんの間になんの違和感もなく堂々と立っている1人の女性






周りより派手な衣装に身を包み






周りより派手な髪型で






スラッとした長身でスタイル抜群の彼女からはフェロモンというものが溢れている気がする






「あーあ、見たくなかったんじゃない?」






そんな隣の男の呟きなんて聞こえない






私はただ、何をすることもなく3人を見つめるだけ