「おーい咲っ!」


「・・・あ、クロトくん。なぁに?」



反応が遅かったのを少し疑問に思ったのか、
クロト君は不服そうにたずねた。



「・・なんだよ。俺と話すのイヤか?」


「ち、ちがうよ!」



「そうですよ、クロト兄」



『リリーナまで肩入れしやがって・・。
なんかたくらんでんじゃねーの?』



ドキ!!


「ち、ちがうってば。
それより、何か話があったんじゃないの?」



そう聞けば彼はぱぁっと顔を輝かせて
私の手をぎゅっと握った。



『おぉ、そうだ!
明日は建国祭があるんだよ。
それに、咲と一緒に行きてーなーって思ってさ!』



嬉しそうに笑うクロト君に、私も微笑んだ。



「へえー!そうなんだ。うん、いいよ!
私も見たい」


『よし、決まりだな!』



「でもさ、クロト君王子でしょ?
なにか・・仕事とか、ないの?」



『・・・あー。大丈夫だ。
親父いるし』



・・ん?なんかクロト君あせってる?



するとリリーナさんが横からじぃぃっとクロト君を見た。




「・・クロト兄、嘘はいけませんわ。
せっかく良い機会に戻ってきたんですもの、
陛下がほっとくはずがないでしょう?


儀式にはきちんと出ていただきますっ」



『だぁーっ!!!
いいんだよ、俺は!!
咲と祭りを見て回るんだっ!!』



「いいえ、いけません!!」



大きな声が上がった。