薬局に入ってきた時から様子がおかしかった。下向き加減で当時20代の私にも、はじめての患者なら?どんな心境で診察室にいるのか少しは理解できた。
常連の患者は、なかなか心境を半分しか見せないものだ。まして小娘薬剤師に弱音を吐いたりはしない。
しかも、薬剤師も医師同様誰にあたるか(薬を渡し説明する=服薬指導)分からない。

結果「泣く女」にあたったのは、私だった。
出てる薬は?鎮痛剤と、湿布?
しかも、天下の国立病院の内科からだった。
聞くと、
「頭がガンガンして眠れないのです。」
「検査もしてもらいましたが、異常がないらしく・・」
検査表をギュッ握りしめていました。
歳も変わらない女の目はどことなく赤く腫れていて、洋服はオシャレしているのにも関わらず、ノーメークでマフラーで口元を隠していた。
多分、泣いたんだなと思った。
しかし、男性ドクターにしては?CT検査(脳の簡易な検査)までしなくても?心療内科にまわせば良いのにと思ってしまった。
泣きたくなることは人生何度だってある。
ましてや二十半ばの女?女の子の悩み事をオヤジドクターには分からんのだろうな~と、淡々と平気な顔で薬の話をして、首にそって湿布を貼ると良いなど説明した。
悲しそうにしていても、笑わなきゃいけないのが薬剤師の仕事なのだ。本当はこの鎮痛剤が頭痛を消してくれても心の傷は時間だなと思った。
そんな時、ずーと下を向いていた女が同じ年頃の私に気付きボソリ話始めた。
「その薬飲んだら、眠れますか?部屋に帰りたくないんです。」
「涙がとまらないんです。泣いてもないても苦しくて悲しくて・・」
うん。うん。解るよ!私も何度もトイレいくふりして泣いたよ!仕事サボって泣いたよ!仕事の内容とか学校じゃあ教えてくれないもんね~
ん?でも家では泣いてないな~
「私、ふられたんです~」から号泣へ20分。
そうか、それは辛かったね。相手の心は解らないから。
どこを直して、頑張ればわかんないもんな~
私もふられたことがある。
毎日仕事が終わると帰りたくなかった。眠れる生薬を買ったこともあったな~
結局スポーツクラブに入って、仕事帰りに3km泳ぎました。
何故って?プールが涙を隠してくれるから。
で、ジャグジー入ってサウナ入って帰宅したら寝てたね。失恋女はオヤジ女になって、2週間ぐらいで泣かなくなりました。傷は残っていたけどね・・それなりに。
精神的に辛いとき根本を解決するのが一番だけど、それがなかなか難しい話でしかも、一時は何もできなくなるわけだから。いきなりスポーツクラブに!とは言わないけれど、泣きながら走ってみてはどうでしょう!また縄跳びでもいいよ!ちゃんと根拠があって悲しいときに、運動をすると脳から幸せの分泌物がでて和らげてくれます。運動が苦手な方は、涙が止まるまでは走って少し落ち着いたら、好きなことに熱中しても同じ効果がえられます。

人を好きになり、ふられる。いいんじゃないですか?
泣きすぎて頭痛がするくらいの、恋してみてください。

晩婚化が進む今だからこそ、その傷も思い出したら可愛かったな~と心から思うのでしょう。

おおっと、本題の「泣く女」は初めの一週間は3日来られてしくしくと泣き、いかに好きだったかを話してくれました。だんだん回数が減り、最後の方はイメージを変えたいとかバーゲンの話で盛り上がって笑顔で帰られました。