午後6時、またきみに会いたくなる。

よくできました、という顔をする。
それは、学校ではその名前で呼ぶな、ということを意味している。

話したいことがたくさんあるのに。
伝えたいこともたくさんあるのに。
今は、先生と生徒―。

「なんでもないっ、です―」

そう言ってもどかしい気持ちを振り払うように踵を返す。

「またあとでね、かほ」

小さな声だったけど、確かに聞こえた。
懐かしい声で、私を呼ぶ声。

たまらなくなって振り返ると、そこには懐かしい笑顔があった。

「みさー?そろそろ体育館行かないとー」

藍里の声ではっとして前を向き直る。
またあとで?
それってどういうことだろう―。



長い校長先生の話が終わって、新任の先生たちの紹介になった。

遠目からでもすぐわかる―

「担任の先生、結構イケメンだよね」

隣で藍里が言う。
藍里には、伝えといてもいいかな。

「あのね、実は古瀬先生ね―」

―――――――――――――――

「えっ、そうだったんだ。だからさっき話してたんだねぇ」

「さっきはあんまり話できなかったけどね」

先生たちの自己紹介が終わって、始業式は幕を閉じた。