「今日先生たちの歓迎会があるんですよ。それに行かなきゃならないので、今日はこれで」

「そう、家は学校の近くに新しく借りたのよね?」

「ええ」

「え、きょーくん実家にいるんじゃないの?」

「いや、学校の近くにアパートを借りたんだ」

じゃあもう、昔みたいに気軽に会えないのかな。
週末どっちかの家でごろごろしたりとか、できないのかな。

「そう悲しい顔するなって、学校じゃ毎日会えるじゃん」

「学校だと、古瀬先生だもん」

「…また今度、遊び行こうか。積もる話もあるだろうし。聞かせてよ、かほのこの4年間の話、な?」

私の心を全部見通してか、きょーくんは優しい言葉をかけてくれる。
そういうところが好きだ。

ぽんっと優しく頭をなでる。

「じゃ、また明日な。歓迎会期待してるよ、がんばれ」

離れる手が名残惜しい。
きょーくんが好き。
昔と変わらず大好き。

だけど、昔とは少し違う。
私の心がそう言ってる。
このふわふわした気持ち、私は知っている。


―恋だ。


玄関が閉まる、午後6時。
もうきょーくんに会いたい私がいる――。