「それにしても、本当に久しぶりね、恭くん」

「俺、親不孝なもんでなかなか実家帰んなかったですからね」

「希子ちゃんも寂しがってたわよ。でも、まさかかほの担任になるなんてね」

「私もほんとーに驚いたんだから!」

自分の分のお茶をつぎ、リビングの食卓で交わされる会話に混ざる。

「俺も知らなかったから驚いたよ。しかもかほ初日から遅刻してくるし」

「え?かほ?今日遅刻したの?」

まずい、黙っておこうと思ったのに。
きょーくんのばか、と言わんばかりに思い切りきょーくんを睨む。

顔の前でごめんという仕草をするけど、顔は全然悪びれてない。

「…ごめんなさい。昨日夜ふかししちゃって」

「もー、明日から自分でお弁当も作ってくんでしょ?大丈夫?なんならまだお母さんが作っても…」

「いーの。春から頑張るって決めたんだから。そうだおかーさん、今から台所使ってもいい?」

「いいけど、どうして?」

「ブラウニー作りたいの」