高校2年生の春―
初日だというのに寝坊をかました私は、人気のない校門を小走りでくぐって教室を探す。
初日から遅刻なんて注目されてしまう。
遅刻というよりも、教室に入ったときのみんなの視線を想像するだけでいやだった。
2年3組。
教室を見つけた私は、扉の前で息を整える。
「みんなの視線なんて気になりません」
小さな声で呟く。
何か気合を入れたいときや、嫌なことに立ち向かうときにうまくいく未来をわざと口にして自分を奮い立たす。
昔からの私の癖だ。
「ごめんなさい!遅刻しました!」
こういうときは勢いがある方がいい。
そう思って扉を開けると同時に、教壇の方に向かって声を発した。
だけどその一瞬―、
まるで時が止まったような気がした。
教壇に立つ人物から目を離せなくなる―。
「おはよう、"三咲"さん」
その声ではっと我に返る。
どのくらい私はこの人を見つめていたんだろう。
恥ずかしくなって目を逸らした私にその人はそっと声をかけてくれる。
「ちょうど今からホームルームをはじめようと思っていたところだから。三咲さんはそこの席だよ」
初日だというのに寝坊をかました私は、人気のない校門を小走りでくぐって教室を探す。
初日から遅刻なんて注目されてしまう。
遅刻というよりも、教室に入ったときのみんなの視線を想像するだけでいやだった。
2年3組。
教室を見つけた私は、扉の前で息を整える。
「みんなの視線なんて気になりません」
小さな声で呟く。
何か気合を入れたいときや、嫌なことに立ち向かうときにうまくいく未来をわざと口にして自分を奮い立たす。
昔からの私の癖だ。
「ごめんなさい!遅刻しました!」
こういうときは勢いがある方がいい。
そう思って扉を開けると同時に、教壇の方に向かって声を発した。
だけどその一瞬―、
まるで時が止まったような気がした。
教壇に立つ人物から目を離せなくなる―。
「おはよう、"三咲"さん」
その声ではっと我に返る。
どのくらい私はこの人を見つめていたんだろう。
恥ずかしくなって目を逸らした私にその人はそっと声をかけてくれる。
「ちょうど今からホームルームをはじめようと思っていたところだから。三咲さんはそこの席だよ」