あきらかに態度がおかしくなる私を横目で不振そうに見ながら、黒宮さんはおばあちゃんと会話を続ける。

「にしてもねぇ……分別はちゃんとやらないといけないよ。と言っても黒宮くんは家事一切駄目だしねぇ……。部屋もちゃんと片付けてるのかい?」


おばあちゃんの問いに黒宮さんは沈黙。


「………やっぱりねぇ。今度休みの日に片付けに行ってあげるわよ。パイロットさんは体調を整えなきゃでしょう?それにはちゃんとした環境で暮らさないと。」



「………いつもすみません。」


「そういう訳で、七瀬ちゃん。私がちゃんとするからね。」


にっこりと笑うおばあちゃん。
私は曖昧に笑って、店の奥にいるおじいちゃんと、おばあちゃんに挨拶をして店を出る。


一刻も早くごみ男、いや、黒宮さんと離れたいのだけど。
なにせ、一緒のマンション。帰り道の横断歩道がいつもより長く感じる。


つかず、離れずの距離でマンションの前まで来る。このまま無視して入るのもきまづいので、エントランスの手前で振り返る。


「あっ、あの。では。その。な、なんかすみませんでした。」


別に私は悪くないんだけれども。


「ふーん。本当に同じマンションだったんだ。」


黒宮さんはそういいながら、賃貸のエントランスとは比べ物にならないくらい豪華な分譲のエントランスへ入っていく。


そして、消えていく。


私は、はぁーっと深く息を吐き出す。


「まさか、AANのパイロットだったなんて………」


私はガクッと肩を落とし、見慣れたエントランスから自分の部屋をめざした。