「なんだい。黒宮君。ゴミ出しちゃんと出来てないのかい。それはいけないわよー。」

うさぎ屋のおばあちゃんが空になったごみ男の湯呑みにお茶を注ぐ。


「………可燃ゴミの日はだいたい国際線のフライトなんで。出せないんですよね。分別ってのも、よくわかんないし。」


「あらー。それは仕方ないねぇ。今度出せなかったら、うちに持っておいでよ。私が出しといてあげるから。」


「いや、それはさすがに申し訳ないんで。」


ごみ男とおばあちゃんの会話を聞いて、私は少し動揺してしまう。


それはごみ男の言ったこの言葉。
『国際線のフライト』

こ、こいつ。
まさか………


「ごめんねぇー。七瀬ちゃん。黒宮君はＡＡＮのパイロットさんでね。忙しいのよ。今度からは私がちゃんとゴミ出しておくから。」


そう言いながら頭を下げるおばあちゃん。


「ばあさんいいよ。悪いし。……おい、ちゃんとネットかけとけばいいんだろ？」


そう言ってまた私を睨むごみ男。あらため、黒宮さん。


「あ、はい。そうですね。ネットさえ掛けてくれれば。」


私は、ごみ男が何者か知り、こそこそと顔を隠す。


なぜかと言うと。


私は空港で働いている。
正確には空港の隣の建物で働いている。
その隣の建物というのは航空会社ＡＡＮ。

私はそのＡＡＮの社内に入っている社員食堂で働いている。
社員食堂は、社内で働いている事務方はもちろん、CAさんや、パイロットも利用する。


つまりは、仕事場でもこの男に会ってしまうかもしれないのだ。


まさか。
まさかごみ男が、社内の人だとは思わなかった！しかも花形のパイロットだなんてっ！