私と彼をつなぐもの。

ちょっとして、背伸びをしながらあたりを見回していた黒宮さんが私に気づくと立ち上がって、こちらに向かって歩いてくる。


「よっ。」


「いらっしゃいませ。」

私はなんでか素っ気なく答える。


「なんだよ。機嫌悪いな。なんか怒ってるの?」


「別に。怒ってません。何になさいますか?」


そう。怒ってなんかいない。ただイライラするだけ。


「コーヒー。って絶対怒ってんじゃん。」

カウンターにもたれ、私の顔を覗きこむ。


「な、もうっ!そんなに見ないでくださいよ!こ、コーヒーですね。」


「あっ。照れた?」


そうニヤニヤする黒宮さん。そして思い出したかのように、『あっ!』と言うと、


「あれだろ。この前の土産。最後の一個俺が食ったから怒ってるんだろ。」


「はぁ?もうっそんなんじゃありません!それに私、それくらいじゃ怒りません!」


「いーや、怒ってたって。俺が食った後、残してたのにってキレてたじゃん。」


「なっ、そ、その時はたまたま、ちょっと好きなやつだったので。でも普段はそんなんじゃ怒んないですって。」


「嘘だねー。この前ラーメン食べに行った時だって、煮たまご食べたら怒ってた。」


「あのですね!人の大事に取っておいた煮たまごを勝手に食べるとかあり得ないんですけど!」


「だって、端に避けてたから嫌いだと思った。」


「もうっ!私には煮たまごを食べるベストの瞬間があるんですっ!大体ですねー黒宮さんはラーメンの味わい方がなってないんですよ!今度、ちゃんと教えてあげますからっ!」


「出た。ラーメンマニアめ。」


私と黒宮さんがギャーギャー言い争っているすぐ後ろにいつの間にか桜井さんが立っていた。

「あの、二人って、そういう関係なんですか?」


ハッとして桜井さんの方を見ると、微笑んでいるのにその笑顔はとても冷たかった。