パイロットには厳しい身体検査が義務付けられている。
身体検査の有効期限は、機長が半年。副操縦士は1年だ。
黒宮さんは機長だから、その有効期限は半年のはず。


「そうなんだよ。マジでヤバイな。俺はウサギ屋の弁当で生きてたからな。」


ウサギ屋のお弁当は、スーパーやコンビニの弁当なんかとは違い、全部手作り、野菜がふんだんに使われて、言わば家庭の味。栄養バランスもすごく良く考えられていた。


信号が赤になり、車が停まると黒宮さんは私の方をチラッと見る。


「お前はさ。料理とか得意なんだろ?食堂で働いてるもんな。いーよな。料理できる奴は。あーこのままでは俺ライセンス取られちゃうかも。ウサギ屋始まるまで、どうしようなぁー。」


ハンドルにもたれながら私の顔をじっと見る黒宮さん。


「………そんなの。彼女に来てもらえばいいじゃないですか。」


信号が青に変わり再び前を向いて運転する黒宮さん。


自分で振っておきながら、黒宮さんの答えにドキドキする。



「………彼女いねぇもん。」



その答えに ホッとする。



「じゃあーCAさんとか?」


「やだ。」


車がマンションに着き、エンジンを止めると車内はシーンとなる。