私と彼をつなぐもの。

あっという間にオムライスを食べてしまった黒宮さん。

私はどんどん減っていくオムライスと、本当に美味しそうに食べる黒宮さんの顔を交互に見ていた。
なぜか、ドキドキとキュンとする気持ちを抱えながら。


「ごちそうさまでしたっ!また作ってよ。」


「な、なんでですかっ!今日は特別ですっ!なんで私が……」


「えー。ケチ。いいじゃん。また作ってよ。」


黒宮さんは、お皿を持って立ち上がる。


「あっ、いいですよ。私片付けますから。」


「うん。そうして。俺、皿洗えないから。」


平然と言う黒宮さん。


「は?」


「俺、家事一切できねぇの。皿なんて絶対割るし。包丁なんて持ったら大事故。掃除もめんどくさくて出来ないし。あっ!唯一洗濯だけはするわ。」


それを聞いてウサギ屋のおばあちゃんの言ってたことを理解する。


『黒宮くんは、全く家事ができない。』


「そんなの………掃除でも、オムライスでも。やってくれる人はたくさんいるでしょう?」


黒宮さんは、じっと私の目を見る。


「そうだな……。でも俺は本当に気に入った奴しか部屋に入れないし。飯も食わないし。」


えっ。私のオムライス食べたじゃん。


すっと伸びてくる黒宮さんの引き締まった腕。男の人なのに指がすごく綺麗だ。
私の頬を軽く、くぃっと擦る。



「七瀬。ついてる………」


そして、私の頬を手のひらでそっと包む。


「七瀬のほっぺた、柔らかいな。赤ちゃんみてぇ。」


そう柔らかく微笑む黒宮さんから、私は目がそらせない。


キス。
するかも。



そんな淡い期待。
黒宮さんの手は頬を滑って私の唇で止まる。


黒宮さんが、じっと私の唇を見つめる。


さっきからドキドキと脈打つ心臓がうるさい。
頭で状況を理解しようとしているけれど、どこかもやがかかったようにぼんやりとしてしまう。


ぽけぇーっと黒宮さんの魅惑的な瞳の奥を見ることしかできない。