私と彼をつなぐもの。

普通の女の子なら、感激するのかもしれない。やっぱりパイロットって年収いいのね!なんて思い、それだけでよってくる女の子もいるだろう。

でも私はそうじゃない。

善人を装うつもりはないけど、現時点でちょっとこの車にイラついている。


「なんでよりによって、こんな車高高い車なのよっ!おばあちゃんが、乗りにくいだろうが!ファミリーカーにしろ!スライドドアにしろっ!」


後部座席のドアを開け、おばあちゃんの荷物を積んでいる黒宮さんに、


「悪かったなっ!」


と怒られた。うん、まあ、それは怒られるよね。

黒宮さんはおばあちゃんの手をとり後部座席にのせると、ドアをしめ私の方を振り替える。


「……アンタ、病院行くだろ?」


「えっ。うん、まぁ、えっと。」



一瞬戸惑ってしまったのは私の服装のせいだ。ぷらっとウサギ屋にお弁当を買いに来たつもりだったので、ワンマイル着どころか、正直、部屋着だ。


上下セットのフワフワのピンクのパーカーにフワフワのショートパンツ。


25歳にもなって、これで外を出歩くのは正直キツい。



「なんでよりによって、そんな格好なんだよ。」


黒宮さんはそう言って、ハッと短く息をはいて嫌みっぽく笑った。


「なっ!悪かったわね!行くわよっ!別に!行ってやるわよ!」


勢いで私がそう言うと、黒宮さんは胡散臭いほど爽やかに笑いながら助手席のドアを開ける。


「お乗せしましょうか?お嬢様。」


「自分で乗れますっ!」


そう言って車に乗り込む私。
正確には、よじ登る。かもしれない。
身長153センチの私にはかなりハードルが高い。
一生懸命よじ登る私を後ろから見ていた黒宮さんは呟く。



「………パンツ見えそー。」



「絶対!見んなっ!」



「見ねぇよ。ストーカー女。」


「うるさい、ごみ男!」


病院に着くまでの車内でも言い争う私達に、おばあちゃんは最初戸惑っていたけれどそのうち『仲がいいのね。』なんてクスクス笑った。


そして私達は不覚にもまたハモってしまう。


「「良くないっ!!」」


おばあちゃんは少しだけ緊張がほぐれたのかクスクスと笑った。