私と彼をつなぐもの。

私の今日の担当は、麺類。

カウンターで注文を聞いてそれから調理する。
麺類担当は、うどん、そば、ラーメンを作るんだけど、それぞれに種類も多いし人気もあり忙しい。


11時オープンと共に徐々にお客さんが増え始め、12時にはピークになる。


注文を聞いては、調理の繰り返しであまりの忙しさに黒宮さんの事なんてすっかり忘れていた。



忘れていたから、いけなかった。



いや、麺類に並ばれたらどうしようもない。




「はいっ!次の方は何になさいますかっ!!」


前のお客さんのうどんを出し、勢いよく次の注文を聞く。



「…………あ。」



そこに立っていたのは、キッチリとネクタイをしめ誰もが憧れるパイロットの制服に身を包み、髪もビシッとセットした黒宮さんが立っていた。



「げえっ!」


っと思わず口に出てしまう。
しまった!油断したっ!思いっきり顔を見られた。『あ』って言ったし、気づかれたかっ!?


黒宮さんを見ると、不機嫌そうな顔をしている。


「なんだよ、げえって。てかアンタここで働いてるの?………マジでストーカーかよ。」


それを聞いて、後ろに並んでいたCA達が騒ぎ始める。


「えー!!ちょっとちょっとストーカーってどういう事ですか!?黒宮さん大丈夫ですかぁ?」


「ストーカーじゃありませんっ!ごみ男に興味なんてこれっぽっちも………」



「あぁ?てめぇ、人の事をごみ男、ごみ男ってなぁ! 」


さらに不機嫌な顔をする、黒宮さん。


そして、長くなっていく順番待ちの列。


「あーもー!、なんでもいいから注文してごみ男っ!」


黒宮さんは、後ろをチラッと見る。


「…………きつねそば。大盛り。ネギなしで。」



「かしこまりましたっ!」


そう言ってさっさっと調理して、黒宮さんの前に出す。


「はいっ!きつねそば、大盛り、ネギなしですねっ!」


そう言ってちょっと笑える。
ネギなしって、子供か。


「……お前いま、ちょっと笑ったろ!?」


「いーえ。べつに。はい、次のかたー!」


そう言って強引に黒宮さんとの会話を終わらす。


黒宮さんの次の、CA達がみんな私の事を睨んだり、ブツブツと悪口を、いったりしていたけれど、今はピーク時間。気にしていられなかった。