恵梨香は、驚いた顔をする。


「えっ！黒宮さんってあの黒宮さん！？えー七瀬、知り合いなのっ！？」


「恵梨香、知ってるんだー。」


「知ってるも何もっ！超エリートよっ！あの若さで機長なんだからっ！」


恵梨香の話によると、黒宮さんはどうやら機長らしい。
パイロットには、副操縦士と機長がいて、副操縦士から機長になるには経験や難しい試験をクリアしなければない。大抵、機長になるのは40代前後の人が多いなか、黒宮さんはなんと、32歳で機長になった超エリートだとか。


「それにあのルックスでしょ！？もう、完璧っ！だからもう、黒宮さんのまわりにはいつもメスライオンがうじゃうじゃよっ！」


「え、め、メスライオン？」


「そうっ！常に女に囲まれてるのよ。CA達にがっちりガードされてるんだからっ。」


そう力説する恵梨香。


へぇー。と興味なさそうにする私。


黒宮さんが機長ってことより、モテるってことより、なにより、32歳だったことに驚く。32歳にもなって、あれですか。


でも、あのごみの出し方、おばあちゃんの話からすると部屋も汚いっぽいし、彼女はいないんだろうな。
なにより、あの性格だしね。


「………もうっ！七瀬もちょっとは恋愛に感心もちなよっ！ラーメンばっかり食べてないでっ！あんたちょっと、太ったでしょっ！」


そう言って制服の上からお腹の肉を掴む恵梨香。


「うぅ…だって今週新しいお店、二軒も見つけちゃったんだもん。」


私の趣味は、ラーメン食べ歩き。

休みの日はほぼラーメンを食べに行くという生活。平日はなるべく調整をしてるんだけど。


「で？黒宮さんがどうしたのよ？」


「うん、それがさー……」


と話しかけて就業時間になる。


「また、休憩の時話すよっ！じゃあ今日も頑張ろー！」


そう言って持ち場に入る。