春色プロポーズ


「俺にファンなんているの? 知らなかったなぁ」

知らなかったなぁ~ですって!? この鈍感男!! ほら、見てみなさいよ。あっちにもこっちにもいるじゃない!
当の本人がこんなんだから、私の気苦労は絶えない。

「もう、早く帰るよ。今日はひな祭りだし、お祝いなの」

「なんの?」

「女の子の」

「へぇ。うちに女の子なんていたんだ」

悠くんはまたしても「知らなかったなぁ」と言うと、ふざけた顔を見せて走りだす。

「な……悠一郎!! この野郎―、待てー!!」

会社の女子社員が見ているのも忘れて大声を上げると、バッグを振り回しながら悠くんを追っかけた。