今日は三月三日、桃の節句。本来は上巳の節句といって、五節句のうちのひとつ。雛人形を飾り、女の子の健やかな成長を願う『ひな祭り』として親しまれている。

「はる、これどうぞ」

雛あられを手にし近づいてきたのは、同じ課で働く先輩の木下理加さん。三十五歳の既婚者で中学生になるお子さんもいるっていうのに、その若さと美貌には毎度驚いてしまう。

「下の娘に買ったんだけど、その時ふとはるちゃんの顔を思い出してね。つい買っちゃった」

理加さんは、悪気の全くない笑顔を私に向ける。

はい、はい、はい。どうせ私は童顔の、おこちゃま体型ですよ。

たしか理加さんの下の子は、小学校二年生だったはず。その子と同レベルだと思われてるなんて、く、悔しい!

顔で笑って心で泣いて。雛あられを受け取ると、自分の席へと戻っていく理加さん後ろ姿を恨めしい目で見つめた。

ふとデスクの上にある卓上カレンダーに目を落とすと、三日のところにピンクのシールが貼ってある。

月末月初は忙しかったけれど、この日だけはちゃんと予定済み。