春色プロポーズ


その話なら知っている。

今でこそコンパクトな雛飾りもあって、すぐに片付けることができるけど、昔は七段飾りを飾る家が多くてすぐには片付けることができなくて。うちの母はひな祭りの日が終わるとお雛様だけ後ろ向きにして、『これで大丈夫』なんて言っていたっけ。

「はるのお母さんは、ちゃんと片付けてくれた?」

「そうだね。でも時間がないときはお雛様を後ろ向きにしてたかな。それでもいいみたいだよ」

でもなんで、今そんなことを聞くんだろう。

不思議に思い振り向くと、さっきまでリビングにいたはずの悠くんが、真後ろに立っていた。

「な、なに? 悠くん、ホント今日はおかしいよ?」

どうしちゃったの?と上目遣いに見ればジリジリと迫ってきて、悠くんから逃げるように後ろに下がれば、シンク台に背中がぶつかり背水の陣。

「悠くん……」

「はるは、お母さんに感謝しないとね」

悠くんはそう言うと、私の身体をふわりと優しく抱きしめる。

「え?」

それって、どういうこと?