「野乃の唇……柔らかかった……」

ポーっと、その感触を思い出し、浸る。

そして、ニヤニヤする。

と、突然━━、

ピリリリリッ!と、現実に引き戻すかの様に、携帯が鳴った。

「うおぅっ!」

俺は飛び上がり、急いで電話に出る。

「もしもし!?」

『もしもーし、智史くーん?』

電話の主は、吉野さんだった。

「吉野さん、どうしたの?」

『調子どお?』

「え?」

『え?じゃなくて、野乃と何か進展はあった?』

「進展……」

俺はまたさっきの出来事を思い出し、ぐへへっ!と笑った。