「鮎原……言いたいことあるんだろ?」


あるよ、あるけど、そんなの言えるわけない。

言わない約束してるし、お母さんもいるし。

下を向いたまま黙っていると、先生が私の携帯を中指でトンとつついた。

私の胸がちくんと痛む。


「何か言ってくれないと、返せないぞ」

「……」


「そっか。相変わらず、俺の前だと全く喋らないな。お前にも理由があるのはわかる。でも、学校だってルールがあるんだ。……俺の言いたいことわかるよな?」


私は、下を向いたまま頷いた。