「おかえりーーー……ぃ?」
……え?お兄ちゃんじゃない!
見覚えのあるふわっふわな後頭部。
うそ!まじ?
焦る私の目の前で、くるりと振り向くすかした顔!
「どうも。たった今、ツルツルの呪いをかけられた担任です」
うっぎゃああああーーー!
ちょうどそのとき、リビングのドアが開いて、りんごを持って入ってきたお母さんと目が合った。
「あら、実希、帰ってきたの?先生来てるわよ」
今?遅っ!
もっと早く言ってよ!
「お母さん!なんで、ここにいないのよ!りんごなんか持ってきてる場合じゃないでしょ!」
逆切れして、理不尽にわめき散らす私の背後に低い声。
「……おい、お母さんは悪くないだろ?八つ当りすんな」
ドッキン!
うっ……この声、嫌い。
先生の声を聞くと、なんかいろいろぐちゃぐちゃになるから嫌い!
だから、今までずっと先生と目を合わさず、名前を呼ぶこともなく過ごしていた。



