「野上せんせーーーーーっ!」
初めて先生を呼んだ。
息を切らし、胸を抑えながら、ようやくたどり着いた先生の前。
タクシーは、ドアを閉めて走り去っていった。
「どうした鮎原?」
あんなに嫌だった声にドキドキする。
「あ、あの……」
先生とこんなに目を合わせるのも初めてで、あんなに嫌だったすかした顔が、すごく眩しく見えるのはなんで?
「なんだよ?どうした?」
先生が、ふわっふわな髪をかきあげながら、ちょっと笑った。
あんなに嫌だった先生の髪、手を伸ばして触れたいと思ってしまうのはどうして?
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