最後の時間の始まり


あ。それ。

その顔が、見たかったの。

気持ちに応えられないことを詫びる、申し訳なさそうな顔なんかじゃなくて、とびきりの笑顔。

それが見られただけで、もう十分だよ。


『ありがとう』


笑顔でそんな風に言ってくれるだけで、十分。


『私こそ、ありがとう』


ねえ。やっぱりね。
ずっと好きだったから、悲しい思いが生まれてくる。


君に背を向け、君の元を離れていく私の目からは、自然と涙が流れていた。


悲しくないわけじゃない。
辛くないわけじゃない。

だけど、伝えたかったのは、好きだったことじゃない。

実らないことなんて、もう知ってるんだもの。

私の想いなんかじゃなくて。

伝えたかったのは、何より言いたかったのは。

君への感謝。


君に貰った幸せを、私は一生忘れないよ。