「どうだった?」


帰り道。

彼女はいつもの笑顔で僕に聞いてくる。



「すごかったよ」


心からの言葉だったが上手く笑えない。



「よかった」


少しの間、沈黙が流れた。



「どうかした?元気ないよ?」




僕は最低だ。


彼女の演奏を最後まで聴かなかった挙句、

一緒にいる時間もこんな態度を取るなんて。



「ちょっと疲れたかな」


今度は上手く笑えただろうか。




「そっか。私も疲れたから今日はそのまま帰ろう」


「うん」